「Green Shape」のサクセス・ストーリー

環境に配慮した製品の環境基準「Green Shape」のサクセス・ストーリー

私たちの創業理念には責任をもって取り組むべき多くの課題が含まれており、製品の生産と販売だけでなく、人々や環境に与える影響をも考慮してすべての事業活動を行っていく事を意味すると考えています。そこで私たちは2010年、環境に配慮した製品であることを示す独自の基準としてGreen Shapeを立ち上げ、基準を満たした製品にそのラベルを付与することを決めました。

2010年の開始当初からすでに厳しいものであったGreen Shapeの基準は、さらに厳しいものへ継続的に強化されており、製品ラインナップに占める対象製品の割合も年々増加しています。そして2023年現在、私たちは自社基準であったGreen Shape環境基準の外部認定を目指しています。開始から10年以上経った今日、私たちが誇るGreen Shapeのサクセス・ストーリーを振り返っていきたいと思います。

"私たちは、サスティナビリティを徹底して追求する企業であるというビジョンに基づいて活動しており、環境にやさしく公正な方法で生産がおこなわれていることを客観的にも評価したいと考えています"

Antje von Dewitz (CEO)

2010年Green Shapeの誕生

世界的に繊維産業は環境に負荷を与えています。有害なフルオロカーボン(PFC)に始まり、柔軟剤や溶剤に至るまで、多くの素材には発がん性、ホルモン活性などの有毒化学物質が含まれています。また、繊維産業における水の消費や汚染、不当な労働条件も問題となっています。

より環境に優しい繊維製造を実現するソリューションの一部になりたい

Antje von Dewit (CEO):「私たち繊維製品メーカーは現在環境問題を発生させる要因の一部ですが、解決策の一部になりたいと考えています。当社は自分たちの事業活動が環境に負荷を与えていること、そして地球の資源が有限であることを認識しています。私たちはこの責任を受け止め、環境への負荷を可能な限り小さくするよう常に努力しています。2010年にはVAUDE独自の環境ラベル "Green Shape "を導入し、公正な労働条件のもとで製造された、持続可能な素材を使用した機能的で環境に優しい製品に対してラベルの付与を開始しました。」

なぜGreen Shapeが考案されたのか?


新しいラベル基準には環境に優しい素材や技術が包括されている必要があった。

「環境に配慮した素材や技術を網羅し、製品開発を完全に、そして一貫して持続可能な方向に導く新しい基準が必要でした」と、Antje von Dewitは振り返ります。しかし、2010年当時、世界中に及ぶ当社の生産活動を包括的に評価するのに適した評価システムはありませんでした。VAUDEは2001年からすでに繊維生産における環境保護に関して世界で最も厳しい基準のひとつであるbluesign®システムのパートナーとなっており、当時からすでに多くのbluesign®システム認証素材を使用していました。しかしアウトドア製品の製造には、合成繊維、金属、天然素材などさまざまな素材が用いられており、それぞれの素材に適した基準がbluesign®では必ずしもカバーしきれませんでした。

サスティナビリティにおける繊維製品の包括的な基準が無く、自分たちで作りあげた。

そこで私たちは、最も厳格な繊維製品の環境基準であると同時に、製品のライフサイクル全体を視野に入れた独自基準を包括的に盛り込んだ認証ラベルを作成することにしました。最初は消費者にとっても有益で、環境に配慮した製品を識別できるラベルを開発してほしいという販売店からの要望でスタートし、Green Shapeの策定に取りかかりました。Green Shapeの開発には、CSR(企業の社会的責任)マネージャーのHilke Patzwallが当初から重要な役割を果たしています。

≪2009年に、素材におけるGreen Shape labelの最初の基準を設定しました。アウトドア向けの繊維製品における世界で最も厳密な基準を設定することが狙いでした。≫

Hilke Patzwall

基準の作成は非常に難しい作業でした。各素材に既存のbluesign®認証のような有用な認証や基準があるか?問題のある化学物質は代替可能なのか?どのようにして生産者を巻き込むことができるのか?等の課題があり、これらを一つ一つクリアすることで包括的な基準の分類と厳格な評価システムが開発されました。
多くの要因が影響する天然素材の評価という難しい問題に対しては、長年のパートナーであるWWF(世界自然保護基金)の支援を得ただけでなく、多くのアウトドア・スポーツ販売店からも協力を得ることができました。

「私たちは業界のパイオニアでした。独自の環境基準を策定することは先駆的で多くの神経と時間を費やしましたが、その価値はありました」―Hilke Patzwall

Green Shapeラベルを取得するためには、各製品が認証されている材料、あるいは特別に環境に優しい材料で作られていなければならず、同時に材料の製造業者も環境認証を受けていなければなりません。そして社内では、製品ラインナップに占めるGreen Shape製品の割合について、毎年明確に目標を設定しています。

有害物質、化学物質に対する戦略

化学物質の管理においてはBettina Rothのもと、品質管理の一環として独自の管理体制を確立しました。「まず、どの素材に有害物質が含まれているかを体系的に調べることから始めました」とベッティーナ・ロスは振り返ります。
「それまで、素材に含まれる化学物質の調査は業界では一般的ではなく、サプライヤーによって品質や知識のレベルに大きな差があるという現実に直面しました。」

«有害物質が含まれていないかの検査を完成品に対して行う方法は、間違っていた。素材段階での検査が必要でした。»

Bettina Roth

問題の要点となったのは「いかにして有害な化学物質を製造工程から排除するか」ということでした。そこでBettinaと彼女のチームは、既存のノウハウに加えてbluesign®のような大手企業と緊密に協力し、物質ごとに使用を禁止したり制限を設けたりするなどの基準を設定し始めました。
その後も、最終的には製造から有害物質を完全に禁止することを目指し、MRSL(製造制限物質リスト)と呼ばれるリストを進化させています。これは常に更新されており、VAUDEに関わる全生産者はその仕様に従うことを約束しています。

VAUDEの化学物質管理基準は、法的な基準をはるかに超えている。

「私たちは使用素材の徹底したMRSL(製造制限物質リスト)準拠と、生産施設の環境・労働安全衛生管理システムを通じて、サスティナビリティの分野において最高基準の認証を作り、この基準を満たした素材を使用するようになりました。この認証には環境だけでなく、各国現地の従業員に対しても完全または可能な限り低いリスクで生産が行われることの保証も含まれています。」―Bettina Roth

障壁を経て、アウトドア業界での最初の成功へ

基準はできたものの、Green Shapeの基準を満たす素材を見つけることは非常に困難で、その厳しい基準を要求することで長年一緒に仕事をしてきた重要なサプライヤーを失うリスクもありました。調達できた場合でも、従来の材料よりもはるかに高価なものになり、基準に必要な監査に要する追加コストを理由に参加しないメーカーもありました。さらに販売店からも、消費者の間で環境に配慮した製品に対する需要がほとんどないとのフィードバックを受け、銀行にもこの野心的な計画は"rubbish"(金にならないゴミ)と一蹴されたのです。

「初期には、さまざまなレベルで激しい対立がありました」―Antje von Dewitz (CEO)

しかし、明確なビジョンを掲げ、何度も話し合い、研修や講習を重ね、物事は一歩一歩前進していきました。Jan Lorch(営業&CSRマネジメント)が率いる様々な分野の専門知識を持ったサステナビリティ・チームはアイデアを各部門に持ち込み、実行可能な解決策を探し続けました。そうしてすべての部門が協力し、当初は困難だったGreen Shapeの基準を実行に移すことに成功しました。


2011年、初の "Green Shape "ショーケース。

その後、徐々に多くのお客様がエコロジカルなVAUDEコレクションに興味を持ち始めました。2011年にはSport Scheck(ドイツのスポーツ用品店チェーン)の協力により、初めてのGreen Shapeの売り場を設置。Green Shapeはサクセスストーリーとして広まり、環境に優しいアウトドア製品への関心が高まりました。

「この結果は私たちが進めている活動にとって非常に重要で素晴らしい出来事でした」―Antje von Dewitz

PFCフリーのアウトドア・ギア実現に至るまでには、多くの波乱があった。

Green Shapeの歴史には困難な課題がいくつもありました。特に繊維製品の製造においてフルオロカーボンとしても知られるパーフルオロアルキルおよびポリフルオロアルキル化合物は生物分解性がなく、排水を通じて環境に入り、食物連鎖を通じて人体にも蓄積され、発がん性も疑われている注視すべき原料です。

私たちはこの問題を認識しており、2010年にPFCの使用禁止に着手しました。当初は、レインウェアのような防水素材に使用されていた防水膜をすべてPFCフリーの代替品に置き換えました。しかし代替品では撥水性をもった表地への含浸が困難で、当時の市場にはこれを解決する有力な手段がなく、私たちはパートナーとともに製品からPFCを排除するための大規模な試験を開始しましたが、当初その試みは成功しませんでした。

Greanpeaceのデトックス・キャンペーンが業界に動きをもたらした

しかしGreanpeace(環境問題に取り組む国際的団体)の「デトックス・キャンペーン」(2011)により欧州の繊維業界は健康と環境に有害な化学物質をすべて放棄するよう呼びかけられ、業界全体に決定的な圧力がかったことがこの取り組みへの追い風となりました。2016年、VAUDEは大手アウトドアブランドとして初めてGreanpeaceのデトックス・コミットメント*に署名し、その中で私たちはサプライチェーンから有害物質を排除し、それについて広く報告することを自主的に約束しました。
*日本ではファーストリテイリング(ユニクロ)が参加

PFCの代替品を開発する試みはマラソンのように幾度となくテストを繰り返す厳しい期間を経て徐々に成果が現れ、私たちは密接な協力関係を持つ化学製品企業とともにPFCを含まない含浸製法の開発に成功し、”Eco Finish”と名付けました。2015年には厳格なGreen Shapeに基準の一部として組み込まれています。

当社のGreen Shape製品は、2019年に持続可能な繊維製品として政府のGreen Buttonシールを取得予定。

中堅のファミリー経営企業として、環境基準の枠組みを自力で変えることは簡単ではありませんでした。特にサプライチェーンと製造工程においては外部の協業も不可欠で、私たちの経営陣は長い間、業界全体による協業と政治的支援を提唱してきました。そしてその活動の成り行きで、VAUDEは2014年にドイツ政府により創設された「Alliance for Sustainable Textiles(持続可能な繊維製品のための同盟)」の創設メンバーとなりました。
「それは、協業により変化をもたらすことができる素晴らしい機会となりました」とAntje von Dewitzは振り返ります。というのも、これはドイツ政府、繊維・衣料品業界、小売業者、労働組合、一般ユーザーを包括した繊維生産活動全体で、国際的に認知された環境基準への準拠を進めること目的として自発的に専門知識と力を結集する初めての機会でした。

年々基準を厳密にし、野心的な目標を掲げた

一方でGreen Shape基準の改訂作業も続けられます。2015年には素材のみに適用されていた基準は、設計に始まり、使用される素材とその製造工程、生産現場、製品の使用と手入れ、そして可能な限り環境に優しい廃棄までの製品サイクル全体を網羅するようになりました。Green Shape製品の割合は年々着実に増加しており、2010年には片手で数えられるほどだった製品数は、2020年には衣料品のほぼ100%、その他のコレクションのほぼ90%に及びます。

Green Button付き製品(Grüner Knopf)

GreenShapeの製品には、持続可能なテキスタイルを示すドイツ政府の認定シールが貼られています。

2019年、Gerd Müller開発相の下、ドイツ政府は社会的・環境的に持続可能な方法で生産されたテキスタイルを示す初の政府シール「Green Button(ドイツ語:Grüner Knop)」を制定しました。Green Buttonが付与された製品はすべて、政府が定めた高い環境・社会的基準を遵守して生産されたものでなければならず、消費者は購入の際の指針を得ることができるようになっています。VAUDEはGreen Buttonの創設と構想に大きく関わりました。特に喜ばしいのは、ドイツ連邦経済協力開発省(BMZ)の機関である国際協力機構(GIZ)が、Green ShapeをGreen Buttonの基準として認めたことでした。

「”Green Shape”が “Green Button"に認定されたことは大きな成功であり、Green Shapeの厳格な基準が正しかったことを証明する貴重なものです」-Hilke Patzwall (CSRマネージャー)

循環型思考がGreen Shapeの核心です。

私たちはこの成功に満足しているわけではありません。 Green Shapeは2022年のサマー・コレクションで更なるアップデートを遂げ、Green Shapeの新製品はすべてリサイクル素材またはバイオ由来素材を主に使用しなければならなくなりました。これは、気候に悪影響を及ぼす排出物質を削減し、循環型経済の発展を支援するものです。この基準には、修理可能であること、材料効率を高めること、リサイクルが可能であることなどの基準も含まれています。今日まで、製品開発にこのような厳しい基準を取り入れているブランドはほとんどなく、私たちはこの分野でのパイオニアとなっています。

Green Shape基準がもたらす製品修理への効果

Green Shape基準では製品の修理に対する独自の指標を設け、製品開発プロセス全体を通して補修の可能性を高める事を考慮しています。例えば、当社の自転車用バッグのバックルは数ステップで簡単に交換できるようになっています。※また、長年にわたり独自の修理サービスを提供しており、多くのリペアカフェ(家電や衣服などを修理する人たちが集まり開催されるワークショップ)と提携しています。


ドイツのオーバーライゼンバッハにあるファクトリーアウトレットにはVAUDEリペアカフェが設けられ、製品を修理することができます。
※ドイツ本国での取り組み。

廃棄物の削減、修理可能性、材料効率、リサイクル材料の使用は、Green Shapeの基準です。

さらに、私たちの製品デザイナーはいかにして製造過程で生じる廃棄物を削減するかという問題に集中して取り組んでいます。裁断とデザイン技術の完璧な連携により素材効率が高まると、まるで魔法のようにほとんどの素材の無駄を消滅させて貴重な資源を節約することが可能です。

リサイクルや廃棄というテーマも新たに加わりました。VAUDEの製品は、可能な限り長持ちし、修理が可能なように設計・製造されています。しかし、どんなに機能的で耐久性に優れ、修理が可能な製品でも、いずれは製品寿命を迎え、廃棄されることになります。残念ながら、繊維製品のリサイクルはまだ始まったばかりで、今のところ全繊維製品の1%程度しかリサイクルされていません。しかしVAUDEはすでにこの課題をGreenShape基準に反映させるための行動を起こしています。

「素材のリサイクルにとって理想的なのは、素材ごとに簡単に分離できて、可能な限り分離した素材に不純物が含まれていない状態です。そのため私たちは製品開発段階において、素材や加工技術を選定するための基準をすでに設けています。」―Hilke Patzwall

スペアパーツが必要ですか?

私達は多くの製品でスペアパーツを提供し、ユーザーがご自身で簡単な修理を行う方法を案内しています。

すべての素材は VAUDE Material Policy に基づき、物理的にリサイクルが可能な素材であるか、現実的にその素材をリサイクルする社会インフラが整備されているかの観点から評価されます。ポリウレタンなどのリサイクルが不可能あるいは非常に困難な素材は製品開発マネージャーが製品の機能にとって本当に必要かどうか、必要な場合でも使用量を減らすことができないかをチェックしています。

リサイクル素材の推進による環境保護

Green Shapeの目標を達成するためだけでなく、私たち自身の野心的な環境保護目標を達成するためにも、2024年までにVAUDE製品の90%以上にリサイクル素材またはバイオ由来素材を50%以上使用することを目指しています。

リサイクルペットボトルや使用済みタイヤはVAUDE製品の貴重な原材料

現在、使用されているリサイクル素材やバイオ由来素材はリサイクルペットボトル、リサイクルコーヒーかす、リサイクル漁網、リサイクル羽毛、ひまし油やトウモロコシから作られたバイオベースの生地など多岐にわたります。このリストに使用済みタイヤを再利用したポリアミド(ナイロン)も加わりました。

使用済みタイヤのようなリサイクルが困難な素材も、部材ごとに分離することでポリアミドの製造に使用することができます。こうしてできたサステイナブルなポリアミドは、従来と同等の機能を持ちながら、製造時のCO2排出量を約60%削減します。この素材は現在、トレッキングパンツなど多くの衣料品に使用されており、2023年サマーコレクションからはバックパックや自転車用バッグにも使用されています。


使用済みの飲料用ペットボトルは、新しいポリエステル繊維にリサイクルして製品に使用することができます。

Green Shapeのサクセス・ストーリーはまだまだ続きます。

Green Shapeのサクセス・ストーリーはまだ終わっていません。製品がさらに環境に優しくなり、エコロジカル・フットプリントが継続的に小さくなり、アウトドア用品の生産による自然や気候への負担がますます少なくなることを目標としています。

CSRマネージャーのHilke Patzwallは「Green Shapeが製品や事業に関わる全ての人にとって等しく価値があり、有効な環境基準になるよう、外部からの認証取得を目指しています」と話しています。これを実現するために、科学者、消費者代表、小売業者、メディア、環境保護団体などの独立した専門知識を今後の開発と認定プロセスに反映させることを目的に、外部の専門家からなるGreen Shape諮問委員会を設立しました。

そしてVAUDE社のCEOであるAntje von Dewitzは環境基準「Green Shape」は、包括的かつ将来を見据えたビジネスを行う上で、VAUDEにとって最も重要な要素のひとつだと確信しています。

「私たちは、未来の世代の生活の基盤を守るために全力で行動しなければなりません。これこそが、私やVAUDE社員全員が一丸となって長年取り組んできた原動力なのです。 持続可能で将来を見据えた方法でビジネスをするということは、子供たちの将来やこの惑星の未来のために立ち上がり、積極的に行動することを意味しています。」

Green Shapeについてもっと知りたいですか?

環境に配慮したGreen Shape製品については、こちらをご覧ください。また、私たちの環境基準がどのように機能しているのか、私たちがどのような基準を考慮しているのか、さらに深く知りたい方は、 sustainability report をクリックしてください。